大きさ:F4号 画材:アクリルガッシュ・パステル
自分が今、何を描くべきか、天啓のように知る瞬間がある。この瞬間なしに、気ままに何かを描こうとすることは殆どない。いつも、描きたいものが先に在る。拙詩集『湖へ』(書肆ブン)の最終に収録した標題作「湖へ」を読み直した深夜、この絵のイメージが現れた。私にとって、湖は原風景だ。そしてこの原風景は、輝く美しい湖ではなしに、湖畔のあなたの姿だった。泳げない私が湖に入り、あなたは――何をしていたかは朧げにしか覚えていないが――私を見守る。はっきりとした輪郭線のない絵を描いたのはこれが初めてだ。その理由としては、私の絵の一つの指針を、失う出来事があったからだ。そして、そのことによって、結果的に私は少し身軽になったと思う。私はこの風景=あなたを、今後、繰り返し描くだろう。
[© KANG HOJU]
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