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ストライク・ジャム

姜 湖 宙

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第8回 蹂躙

     


    サイズ:F10号 画材:アクリルガッシュ

     

     黙っていられなかった。踏んでいるのが私だと気がついたとき。

     しかし、ほんとうに、その足が私の足で、直に感触が伝わってきたとしたら。

     果たして、同じように声をあげただろうか。

     私は遠くにいるので、とても気楽だ。

     今日、東京の編集部の人と電話をしながら、苦労したことがないんです、と率直に言った。

     同胞の彼は、ただ、私が同胞だという理由のみで、私を取材したいと言う。

     その優しそうな声への返事を、どうして今日一日、こんなに悩んでいたのだろう。

     私は、何故、遠くのことを考えるのだろうか。

     それはこの手の中のスマホのせいなのか。

     私は逃げてしまいたい。取材も、会議も、明日のバイトも、作りかけのプラカードも、絵本の依頼も、三百文字の言葉の準備も、バースデーケーキを焼くことからも。

     死んだこどもたちは布に包まれ、ひょいと持ち上げられる。

     かるがるしく。

     わたしの足元を見下ろすと、新しいスニーカーがあって、

     ついにあたたかい靴下も注文した。

     今、彼らが殺されていても、もう今からは子どもの誕生日で、

     たくさんの料理を拵えて、バスボムを買いに行くつもりだ。

     私は呑気に、深刻な言葉を吐くことが許される。

     それはとても、幸福なことだ。

     

     

     

    [© KANG HOJU]

     

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    連載記事

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