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戦争

亀山 亮

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第18回 クマと人間

     

     

     

     

     

     

     

     北海道や東北では冬眠前のクマの出没騒ぎで日本中が「クマ」「クマ」「クマ」と空前の大騒ぎになった。

     殺されたクマたちのほとんどは食肉にされることもなくゴミとして処分されていく。

     山熊田(新潟県村上市)のまたぎたちは自分たち人間もクマも山の生態系の中では同列で豊かな山河がなければ自分たちは生きていけないということを深く理解している。

     彼らにとって生と死は表裏一体の存在でクマは害獣ではなく、山の神からの授かり物として大切に扱われる。

     身体性の消失は生物としての人間の生が消滅していくと同時に、他者への創造力も欠如していく。

     温暖化は地球の環境を大きく変えてしまった。僕の住んでいる八丈でも巨大台風が上陸して大きな被害を受けた。

     海水温の上昇で南方系の魚が増えて、海藻類は消滅し海の中の生態系も大きく変わった。

     そしてパンデミックの終焉から世界各地で国家間の大規模な戦争が始まった。

     戦争は社会に分断を生み出し、古から為政者は「国の安全と平和を守る」というパワーワードで人々を狡猾に敵と味方に色付けし、民族や国籍の違いを理由に人間を記号化して憎悪が増殖されていく。

     戦争が一度始まってしまうと、後戻りが絶対に不可能な壮絶な破壊と想像を超えた殺し合いが始まる。

     世界を覆うファシズムの再来によって、私たちは無自覚のままに臨界点を超えて終焉へと向かっているのかもしれない。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    [© Ryo Kameyama]

     

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