2011年 シウダーフアレス ヘロインを注射する女性
2017年 チルパンシンゴ近郊 政府軍のヘリコプターを警戒して、夜間山中でケシの樹液からヘロインを精製する男性
メキシコを初めて訪れたのは1996年チアパス州のジャングルにサパティスタ民族解放軍の取材に行った時だった。
新自由主義によるグローバリゼーションの搾取に異を唱え、先住民の権利獲得のため彼らが蜂起して今年で30年が経つ。
その後、北米自由貿易協定の発効によって、関税が撤廃され北米間の国境の往来が自由化されるとメキシコ国内の経済格差は絶望的に拡がっていった。
日本の自動車会社や多国籍企業は安い労働力を求めてメキシコ国内を席巻し、アメリカへはメキシコから安価なドラッグが流入。アメリカからメキシコへは大量の武器と安いとうもろこしなどが入り込んでいった。
メキシコ人の主食のとうもろこしを生産していた伝統的な零細農家は大規模農業のアメリカ産の安いとうもろこしに市場を奪われ、耕作を放棄し現金収入を求め都市部でスラムを形成していった。
2006年以降カルデナス大統領(当時)がカルテル組織壊滅を宣言し大規模な軍事作戦を実施したが失敗。その結果マフィアと政治は完全な形で一体化した。
法執行機関の末端まで汚職と暴力は浸透し、カルテル関連の暗殺や誘拐が日常的に起きるようになった。
カルテルの暴力に巻き込まれた失踪者は毎年増加し、公式発表数だけでも10万人を超えた。
メキシコ当局が犯罪グループに加担して捜索をしない為、家族たちが主体となって捜索するボランティア団体がメキシコ全土に数多く存在する。
[© Ryo Kameyama]
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