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戦争

亀山 亮

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第19回 ファシズムと情緒

    2001年 ガザ パレスチナ警察に反撃するイスラム聖戦の兵士(この戦闘で二人のイスラム聖戦の戦闘員が死亡した)

     

     

     

     自民党の圧倒的勝利で日本は大きく全体主義に傾いてしまった。

     1930年代の国粋主義的な日本やナチス・ドイツが世界恐慌による経済不況で人々の生活が困窮していた時期に軍備を増強し、他国を侵略していった歴史と重なる。

     戦争には勝者も敗者も存在せず、一度始まれば破滅まで突き進んでいくのは今まで自分が中東やアフリカの紛争地で見てきたどの戦争でも同じだ。

     政治によって外国人排斥や特定の民族への差別が意図的に煽られ、憎悪が拡大し、国家によって国民は分断され戦争へ総動員されていく。

     アメリカでトランプ大統領の私兵(ICE)が覆面を被って人々を路上から令状なしに連れ去り、抵抗する者を射殺していく様子はゲシュタポがユダヤ人やロマ人を、日本軍が中国や朝鮮半島の人を、強制連行していった歴史とそのまま重なる。

     「日本列島を強く豊かに」

     広告代理店のマーケティングによって、人為的に操作された1億6000万回という異常な再生回数を数日間で叩き出した高市首相の具体的な裏付けがない言葉は、ミームとなってSNSを介して人々の潜在意識へと浸透していった。

     気候変動で地球環境の土台は崩壊し、貧困格差と高齢化社会が進んでいく中、主食の米さえ買いあぐねている市井の人々は身体的にはどこかおかしいと、わかっているはずなのに「日本人ファースト」という情緒的な政治家の言葉の噓に身を委ねてしまうのは、サッカーやオリンピックを応援する人々の集団の熱狂がいつのまにか漠然としたナショナリズムへと収斂していくのと同じく、無意識に「力」と「権威」に依拠していく人間の普遍的なファンタジーなのかもしれない。

     「なんでみんな戦争に反対しなかったの?」子供の頃にシベリアに抑留されていた祖父に聞いた事がある。

     「みんながそうだったから仕方がなかった」としばらく沈黙した後に静かに答えた祖父。

     僕たちにも祖父と同じく「みんながそうだったから」と答える時代がすぐそこまできているのかもしれない。

     

       

     

     処刑されるのは人民であり、銃殺部隊を編成するのも人民である。

     人民とは曖昧で無作為であると同時に明確な法でもある。

     そこにはごまかしなど存在しないし、存在し得ない。

     ──『ロスト・シティ・レディオ』新潮社(カルロス・モンシバイスの引用句より)

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    [© Ryo Kameyama]

     

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