◉国策民営
政策は国がつくり、それに従って民間が運営するという仕組み。
持ちつ持たれつ甘やかされて
福島原発事故の後の2011年5月18日、電気事業連合会は資源エネルギー庁長官あてに「『原子力損害賠償に関する政府支援の枠組み』への要望」を提出し、「原子力は国策で遂行されてきたこと等から、東京電力だけでなく国も賠償責任を果たしていくべきと考えます」と求めていた。電気事業連合会の荒木浩会長・東京電力社長(当時)は、1968年1月23日の記者会見で「国のエネルギー政策で原子力をやっているのだから、廃棄物も国が全責任を持ってほしい」と、当時の科学技術庁に申し入れたことを語っていた。
国策に従って原発をつくらされてきたことは事実である。2005年7月19日付電気新聞の「デスク手帳」にいわく「推進が目的か。はたまた目的あるから推進なのか。設備過剰を尻目に国策民営」。メインの記事は、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会に原子力部会がスタートするというもの。そこには、電力自由化に触れて、こう書かれていた。
「自由化から5年がたち、電力会社は初期コストの負担が重い原子力発電への長期投資に従来に増して慎重な姿勢を示すようになってきた。
かつてのように電力需要の高い伸びが今後は見込めないという点も慎重姿勢に拍車をかけている」。
2ヵ月後の「デスク手帳」には、プルサーマルは「一文の得にもならないがこれも国策」とあった。
そうは言うけど、代わりに電力会社の経営者たちは、原発が経営を圧迫しても資本主義の原則を外れて「国策ですから」と開き直ることで、株主からの追及を免れたりしてきたんじゃないの。2017年9月14日の衆議院原子力問題調査特別委員会に参考人として招致された橘川武郎東京理科大学イノベーション研究科教授は、「そもそも、国策民営体制というのは誰が責任を持つかがわからないようになる仕組みだったところが最大の問題であって、現状も、原子力問題については、当事者が誰であるかが見えない、無責任状態が続いていると思います」と述べた。
それでいいのだ、というのが同年4月12日の衆議院経済産業委員会で世耕弘成経済産業相の答弁。「日本においては、原発の運営に関しては、国がまず安全性や適切な事業運営を確保するという観点から、制度の整備ですとか規制の実施を行う、そして政策の方向性の決定の役割を担う。一方で、原発の運営自体は民間事業者が責任を持って行うとしてきたところであります。これを政府として国策民営と言うわけにはいかないんですけれども、今後もそうした役割分担を変える必要はないと考えております」。
胡乱な話さ。
◉国産エネルギー
自国で産出するエネルギー。燃料となるウランは100%が輸入品であるにもかかわらず、原発を「国産」あるいは「準国産」と呼ぶことがある。
理屈と膏薬はどこにでもつく
資源エネルギー庁や電力会社のパンフレットでは、輸入しているウランを「国産エネルギーと仮定」したりしている。1971年5月13日の衆議院商工委員会エネルギー・鉱物資源問題小委員会で、通商産業大臣官房の半沢治夫総合エネルギー政策課長は、「ウラン原料の場合には、輸送あるいは備蓄等でかなりコントロールがきき得るであろうということから、一応国産とみなしておるわけでございます。これは見方があろうかと思います」と頼りない答弁をしていた。
それではマズイと、ウランを燃料として原子炉内で核分裂させれば新たな燃料のプルトニウムが生まれるとか、使用済みの燃料から取り出したプルトニウムでMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料をつくることができるとかと屁理屈を並べ、だから「国産」と考えてよいと言い募ることになる。ご苦労さん。
さすがに遠慮をして、「準国産」と言われることが多い。と見ていたら、『エネルギーフォーラム』1984年10月号に「原子力を“純国産エネルギー”に仕上げる『動燃・東海事業所』」と題する記事があって、マジびっくり。「FBR[高速増殖炉]の再処理は、原子力発電が“準国産エネルギー”から“純国産エネルギー”に変わる要の施設」なんだって。
と思ったら翌11月号には「原子力の『準』から『純』国産エネルギー化への戦略」という大見出しがあるではないか。筆者は近藤駿介東京大学工学部教授だが、本文にそれらしい文言はない。編集部が付けたんだろう。“純”が好きねえ。ついでに本文からちょっぴり引用。「『21世紀初めにはFBRを実用化し、もって高いエネルギーセキュリティを実現する』というのは原子力関係者の国民に対する約束といってよい」。
約束は要らないわ。
まあ、なかにはこんなご高説を垂れる方もいらっしゃいますけど。
「原子力は国内の技術力と、安全に運用する『人間力』で作る準国産エネルギーです」(山名元京都大学名誉教授――『日経エコロジー』2015年6月号)。
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